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三元交配のテクニック
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三元交配のテクニック

2019.10.31交配のテクニック

三元交配は子牛を強健にする

三元交配とは、但馬系と藤良系と気高系の3種類の系統を掛け合わることを言います。
三元交配をすることによって、3つの系統のそれぞれの優れた資質を子牛に受け継がせるとともに、雑種強勢の力で、生まれた子牛は生命力が強くなり発育が良くなります。
また三元交配の素牛は強健であることから、肥育に入ったとしても食い止まりになりづらく、BMSと枝重の増加が期待できます。

和牛はホルスタイン種に比べて、体質的に弱いところがあります。そのために少しでも生命力と強健性が増す三元交配は非常に有効です。

三元交配をきちっと決めるためには、計画的に繁殖母体を生産して、その繁殖母体に適切な系統の種牛を交配しないと、三元交配のメリットを得ることが出来ません。

豚の生産では昭和40年代から三元交配が急速に普及しました。
現在、日本で流通している豚肉のほとんどが三元交配で生産されています。
豚にもランドレース種やバークシャー種といった様々な品種がありますが、そういった純血種が食用に供されることは少ないです。
豚はランドレース種とバークシャー種を交配させた雌豚を繁殖母体として、肉質に優れたデュロック種を交配して三元交配で生産することが主流です。

豚はこうして三種類の品種を掛け合わせることにより、繁殖性と肉質と肉量のバランスが取れた豚肉が安定的に生産されています。

和牛には、大まかに但馬系と藤良系と気高系の三種類の系統があります。この三種類の系統を上記の豚と同じように掛け合わせることによって三元交配が完成します。
例えば、但馬系の雌牛に藤良系の種雄牛を交配した繁殖母体に、気高系の種雄牛を交配することによって三元交配が完成します。
その但馬系に藤良系が交配された繁殖母体に、気高系の血が薄ければ薄いほど、気高系を交配したときに雑種強勢の効果は高まります。
雑種強勢が発生すると、生まれた子牛は親牛を上回る強健さと発育の良さが期待できます。

現在の和牛は改良が進み、BMSや枝重は増大しました。
その反面、和牛の系統の純血度は下がり、ハーフや三元交配で造成された種雄牛が多くなりました。三元交配で子牛を生産するには、三元交配が作れる繁殖母体を揃えなければいけません。
繁殖母体や種雄牛がすでに三元交配になってしまっていると、雑種強勢を利用できる交配を考えるのが難しくなります。

三元交配の繁殖母体(例、百合茂×安福久×第一花国)は能力が高く、完成されており、強健で病気にもなりにくい強さを持っています。
しかし、完璧性や強健さや病気になりにくい資質は親牛よりも子牛に求められていると思います。
三元交配とは、お肉となる肥育素牛を生産するコマーシャル用の交配理論です。
繁殖母体を造成するには系統内交配や二元交配といったブリーディング用の交配で繁殖母体を造成して保留すべきです。

お勧めの三元交配の例

現在では気高系の種雄牛が最も勢いがあります。
気高系は脂肪交雑が良く入り、体型や発育も良く、子牛の生れ落ちのバラつきが少ないという特徴があります。
繁殖母体としても、気高系は大型で体形が良く、大人しい性格と子だしが良いです。

今回は、全国的に勢いのある気高系の種雄牛を一代祖にして、但馬系もしくは藤良系の母体を二代祖、三代祖にする三元交配の方法を紹介します。

全国のどこの市場においても美国桜は人気があります。
美国桜は大きい牛ではないために、百合茂や勝忠平といった気高系に交配することが多いです。
難産にならないために体高のある大きな繁殖母体を造成して保留するということは非常に大事なことです。
しかし、気高系に交配した美国桜の繁殖母体に三元交配で肥育素牛を生産しようと思うと、但馬系の種雄牛を交配しないといけません。
但馬系の種雄牛は肉質には優れていますが、大きな繁殖母体に交配したとしても、生れ落ちの大きさがバラついてたりてしまうことがあります。

そこで、美国桜を但馬系の繁殖母体(例 安福久)に交配して保留します。美国桜を但馬系に交配すると、小さい牛が生まれてくるリスクはあります。
繁殖母体を造成するための系統交配や近親交配、二元交配は、小さい牛が生まれてくる多少のリスクがあります。
そういったリスクを取りたくない方は、市場で但馬系母体に交配された美国桜の雌を繁殖母体として導入して下さい。

そうして保留した美国桜×安福久の繁殖母体には、気高系の種牛を交配することで簡単に三元交配の素牛が生産することが出来ます。
但馬母体に掛け合わせた美国桜母体は、産ませるリスクや、導入する際の費用は掛かりますが、長く活躍してくれる看板母体となってくれると思います。

交配例)
    勝忠竜×美国桜×安福久(初産)
    若百合×美国桜×安福久
    諒太郎×美国桜×福増
    幸紀雄×美国桜×茂洋
    百合久×美国桜×菊福秀
    直太郎×美国桜×福栄

次に隆之国の後継牛として全国的に利用されている隆安国を例にします。
隆安国は(隆之国×安糸福×第五隼福)と隆之国に比べて但馬の血量が濃くなりました。
その結果、隆安国母体に気高系を交配すると隆之国に比べてより強い雑種強勢の効果が期待できます。

交配例)勝忠竜×隆安国×美津照重(初産)
    若百合×隆安国×安福久
    美津忠×隆安国×北平安
    諒太郎×隆安国×茂洋
    安亀忠×隆安国×福増
    直太郎×隆安国×北乃大福

最後に、これからの大活躍を期待している但馬系の福増を例にします。
福増は(安平吉×糸松波×福栄)と但馬系の血量が多いのにも関わらず、発育が良く母体にお勧めです。

交配例)勝忠竜×福増×隆之国(初産)
    実有貴×福増×第一花国
    百合久×福増×芳之国
    諒太郎×福増×美国桜
    美津忠×福増×花国安福
    夜桜×福増×北福波

是非とも上記の例を参考にして、強くて発育の良い三元交配の牛を生ませて下さい。
ご意見、ご質問がございましたらお気軽にお問い合わせください。

(写真は隆安国)