和牛繁殖の改良アイデア
2018.03.05交配のテクニック
みなさんは導入される血統はどうやって決められていますか?
地域によって、それぞれ特色があると思います。
兵庫、鹿児島、宮崎、宮城、福島、どの地域も素晴らしい系統が引き継がれれています。
異なる系統を交配させると、強い子が生まれることが多いです。
血縁関係を遠くすることによって、雑種強勢がおこり、強く大きく、健康で、より安定した BMSと枝重がとれます。
血量を高く(共通の祖先を多く)すると、受精卵から胎児までの妊娠期間も含めた、変性死 のリスクが高くなります。 授精の際に、血統を意識して、血を離すような交配をすることで、産子は大きく強く育ち、 肉量が増えて枝重をねらえます。
今日はあらためて雑種強勢について書きます。
和牛繁殖の雑種強勢で中心となるのは但馬牛です。
但馬牛は、肉質が良く、ロース芯が大きく、歩留まりが良く、モモ抜けが良い、といった優れた特徴があります。
安福165の9、安福久、白清85-3、菊谷、茂重波といった、但馬牛の優れた種雄牛は、 上記の特徴が強く子牛に遺伝します。
但馬牛の種雄牛が一代祖の、直接の産子の活躍はもちろんのこと、保留され母体になっても、子に優れた能力が引き続いて遺伝されます。
但馬系の牛は、第一花国、平茂勝といった但馬の血量が少ない藤良系と平茂勝系と相性が良いです。
またオランダ産のホルスタインとも相性が良いことから、世界の多くの系統とも相性が良 いと思います。
但馬牛は世界的にみても、早熟で繁殖性もよく、大人しくて飼料も小食です。
但馬牛は霜降りの能力を抜きにしても、世界的にみて非常に優れた品種です。
しかしながら、但馬牛の原種は肉質は抜群ですが、現代の牛飼いが満足する枝重は取れないでしょう。
是非とも雑種強勢をフルに使いましょう。
田尻系、熊波系、藤良系、気高系、栄光系を、異なった系統同士になるように交配させると、お互いの長所が、短所を補う形で表現され、理想的な素牛となります。
また現代ではありがたいことに、気高系でありながら但馬系のような素晴らしい肉質を持つ、幸紀雄や諒太郎や若百合といった、質量兼備の素晴らしい種雄牛がいます。
それらの貴重な精液ストローが手に入った場合は、出来るだけ遠い血縁関係になるように工夫して和牛繁殖母体に交配して、より強く大き な市場評価の高い素牛を作ることを目指して下さい。
一方で、逆に近親交配をしたらどうなるのでしょうか。
長い歴史を持つ和牛繁殖は、近親交配から始まりました。
近攻係数を高くして、例えば安福久を祖先に持つ繁殖牛に安福久を交配すると、両親の共通 祖先の安福久の遺伝子が強く表現されて、高いBMSと肉質の良さが表現されるでしょう。
しかしながら、もちろん強い弊害があり、近攻係数が高くなるということで、遺伝病のリスクの向上や虚弱児を生み出します。 血を固めた素牛を生産するという明確な目標があるとき以外は、共通の祖先をもつ牛同士の交配は避けて下さい。
現代ではありがたいことに超近親交配で造成された、特定の強い遺伝力を持ちながら、遺伝病を持っていない種雄牛がいます。
そういった超近親交配種雄牛を利用して、リスクを回避しながら、時代のニーズに合った牛さんを生産して下さい。
これから期待する近親交配種雄牛は、凛斗福や久福久でしょうか。
また気高母体と相性が抜群の花国白清も期待します。
皆様も雑種強勢を意識して交配して下さい。
元気で大きく、強く、肉質が良く、歩留まりが良く、枝重が取れる牛を目指しましょう( ´ ∀` )
凛斗福
(安福―165の9×安福久×平茂勝 )
久に165をかけていながら、小さくならず、中駆の伸びが良く、肉質も良く、どの牛にかけても赤毛になり ません。雌なら是非とも保留して下さい。
久福久
(安福久×安福久×金幸 )
久に久の親子掛けですが、久福久は大きく、体型が優れており、理想的な和牛の体型をしています。遺伝病も持っておらず、近親交配でありながら、圧倒する優れた体型です。
花国白清
(白清85-3×第一花国×安福)
安福から飛騨白清を経て、白清85-3に受け継がれた、モモ抜けと脂の質が素晴らしいです。北海道育種値3位で北乃大福と北安平以来の北海道の但馬系エースです。